この記事では、自己破産について解説します。
自己破産は自力での借金返済が困難な方向けの救済措置で、債務整理の一つとして位置づけられます。
よく「自己破産しちゃえば借金は払わなくていい」という話を耳にしますが、どういう仕組みで借金がゼロになるかを答えられる人は少ないのではないでしょうか。また、自己破産した場合のリスクをよく知らないまま手続きに踏み切ってしまう人も少なくありません。
もう一つ、自己破産は「周りにバレる心配はないのか」という点。
特に家族に内緒で借金をしていた場合、それを隠しながら自己破産できるのかも注目したいところです。
この記事を読んでいただければ、
- 自己破産の基礎知識
- 債務整理の種類と違い
- 家族や周りにバレず自己破産できるのか
といったことが学べます。
それではどうぞ!
自己破産とは?
自己破産(じこはさん)とは、借金の返済が自力では困難な方向けの救済措置で、裁判所に申し立てを行い受理されれば借金の支払い義務が免除される手続きです。
自己破産以外にも個人再生・任意整理といった債務整理がありますが、減額率を比較してみると、
減額率 | |
自己破産 | 債務総額の100% |
個人再生 | 債務総額の70~80% |
任意整理 | 0%~(将来利息カットがメインのため) |
個人再生・任意整理は減額後も返済が必要ですが、自己破産後は借金の返済が必要ありません。
自己破産の特徴
自己破産は何のリスクもなく支払い義務が免除されるわけではなく財産の処分(差し押さえ)が前提となる手続きです。
タダ同然で免除してしまっては債権者が損をするだけになってしまうため、価値のある財産を処分・整理してそれを債務の代わりとして債権者に配当するという仕組みになっています。
財産差し押さえの範囲は下記の通りです。
≪財産差し押さえの対象になる範囲≫
- 持ち家・土地
- 高額な現金・預貯金
- ローン商品
- その他高額な価値のある財産(おおよそ20万円を超えるもの。この中に車も含まれる)
≪差し押さえの対象にならない範囲≫
- 賃貸物件
- 衣類や家電・寝具といった生活必需品(ここにスマホ・パソコンも含まれる)
- 給与(ただし手取りの1/4は差し押さえ有り)
- 仕事上必要な道具類
- 99万円以下の現金
- 20万円以下の預貯金
- その他財産の価値が20万円に満たないもの
上記の通り財産としてのボーダーラインは20万円になることが多いので、20万円を下回れば残せる可能性が高くなり、逆に20万円を超える場合は差し押さえ対象になることが多いということになります。
自己破産の条件
自己破産は裁判所に申し立てて認可されることが大前提となるので、「自己破産の条件=裁判所の認可を受けるにはどうすべきか」という話になります。
自己破産の条件は以下の通りです。
- 借金の返済が著しく困難であること
- 免責不許可自由に該当しないこと
借金の返済が著しく困難であること
自己破産は借金の返済見込みがない人の“最終手段”という位置付けなので、継続的な収入のある方や預貯金が十分にある方などは手続きできません。
一概に「預貯金○円を下回る場合」「毎月の収入が○円以下」といった細かい条件があるわけではありませんが、抱えている借金の返済見通しが立たないと裁判所が認めれば自己破産できるということになります。
免責不許可事由に該当しないこと
免責不許可事由というと難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと自己破産を行うにあたっての禁止行為を指します。
免責不許可事由は下記の通りです。
- 意図的に財産を隠す・壊す・誰かに譲るなど行為
- 自己破産を前提として借り入れする行為
- 借り入れが複数あってその中の特定の債権者にだけ返済する行為(偏頗弁済)
- ギャンブル(パチンコや競馬・競艇など)を理由とした借金
- 融資(借り入れ)審査時、収入やその他情報を偽って借り入れする行為
- 破産管財人(破産整理の役割を担う人)に非協力的な行為
- 前回の免責(自己破産)から7年以内
ただこれらの免責不許可事由を自分で判断するのは難しいですし、仮に該当していたとしても場合によっては認可されることもありますので、まずは法律事務所に相談することをオススメします。
自己破産は2種類
自己破産は、大きく分けて管財事件と同時廃止の2つに分けれ、さらに管財事件においては「少額管財」と「通常(特定)管財」に細分化されます。
管財事件
裁判所が選任する破産管財人(弁護士)が破産者と債権者の間に入り、
- 財産や免責不許可事由の調査
- 財産の管理・配当
- 裁量免責の可否の意見
といった役割を担い、自己破産が妥当かどうかの判断を行います。
また管財事件から免責許可が出るまでの期間は最短で2~3ヶ月程度、長い時には半年~1年程度かかることもあります。
同時廃止
同時廃止は手続きと同時に免責許可が決定する手続きで、管財事件のように破産管財人が選任させることもなくスムーズな手続きが可能です。
免責決定までの期間に関しても最短で2ヶ月程度、長くても半年程度なので管財事件よりも早く完了するのが一般的です。
自己破産のメリット・デメリット
自己破産の一番のメリットは借金の返済義務が免除になることですが、他にも様々なメリットが存在します。逆も然りでデメリットも多く存在しますので、どちらも見定めた上で自己破産を検討するようにしてください。
自己破産のメリット
冒頭でもお伝えしたように、自己破産の最大のメリットは借金の返済義務が免除になることです。
自己破産の副次的なメリット①督促状や取り立ての一切が停止する
自己破産を法律事務所に依頼すると、各債権者宛に受任通知(じゅにんつうち)が送付されます。
督促状や取り立ての連絡が来るのは、分かっていても精神的に辛いものがあります。取り立てが停止されれば精神的余裕が生まれ、第二の人生を歩む足掛かりにもなるはずです。
自己破産の副次的なメリット②ある程度の財産は残すことができる
自己破産=財産がなくなるというイメージが強いですが、前述でもお伝えしたように意外と残せる財産は多いです。
- 賃貸物件
- 衣類や家電・寝具といった生活必需品(ここにスマホ・パソコンも含まれる)
- 給与(ただし手取りの1/4は差し押さえ有り)
- 仕事上必要な道具類
- 99万円以下の現金
- 20万円以下の預貯金
- その他財産の価値が20万円に満たないもの
例えば、賃貸に住んでいて且つ20万円に満たない車を所有していた場合は「家と車両方残すことができる可能性がある」ということになります。
免責不許可事由の兼ね合いもありますので中々同時廃止にはならないかもしれませんが、残しておける財産が意外とあること、さらに自己破産後の財産は自由財産であるというのも自己破産のメリットと言えるでしょう。
財産に該当しない範囲であっても免責不許可事由に該当する場合は差し押さえの可能性もあります。
自己破産のデメリット
自己破産のデメリットは下記の通りです。
- 財産の没収(差し押さえ)
- 保証人(連帯保証人)に請求がいく
- ブラックリストに登録される
- 官報に掲載される
- 一部の職業資格に制限がかかる
- 依頼料が高額
財産の没収(差し押さえ)
自己破産の最大のデメリットは価値のある財産は没収(差し押さえ)されてしまうことです。
財産の差し押さえの対象になるものは下記の通りです。
- 持ち家・土地
- 高額な現金・預貯金
- ローン商品
- 給料の一部(手取りの1/4)
- その他高額な価値のある財産(おおよそ20万円を超えるもの。この中に車も含まれる)
基準としては20万円を超えるものは財産の対象となります。
特に裁判所が絡む手続きになりますので誠意をもった行動(申告)を心がけましょう。
保証人(連帯保証人)に請求がいく
住宅ローンやカーローンなどの高額ローンを組む際に保証人(連帯保証人)を求められることがあります。保証人(連帯保証人)の役割としては「何らかの理由により返済が困難になった場合の返済義務者」ですが、まさに自己破産のようなケースが該当します。
例えば、住宅ローンを組む際に親が保証人(連帯保証人)になっていた場合は、自己破産をしても親に支払い請求が移ってしまうということです。
何も知らされていない保証人(連帯保証人)に突然請求がきたら大きなトラブルにもなりますので、どうしても自己破産が必要だと判断した場合は事前に保証人(連帯保証人)に相談するようにしましょう。
ブラックリストに登録される
自己破産後5~10年間はブラックリストに登録され、新たな貸し付けやローン、クレジットカードの作成ができなくなります。
また、自己破産時にはクレジットカードも凍結(=強制解約)しますので、クレジットカード払い中心の生活をしていた場合は注意が必要です。
例えば、自己破産でライフライン(電気・水道・ガスなど)を止められることはありませんが、支払先をクレジットカード払いにしていた場合は間接的にライフラインも利用できなくなる、ということになります。
そうなる前にクレジットカード払いの内訳の整理を行い払込票や口座振替などに切り替えておくことをオススメします。
官報に掲載される
国が発行している官報(かんぽう)という機関紙に、自己破産した人の名前や住所が掲載されることになります。
一部の職業資格に制限がかかる
自己破産の手続きから免責決定までの期間(3~6ヵ月程度)、一部の職業・資格制限が発生するため仕事に支障をきたす場合があります。
職業・資格制限がかかるのは下記の通りです。
- 士業(弁護士・税理士・司法書士・建築士など○○士が付く職業)
- 銀行の取締役・執行人・監査役
- 日本銀行の役員
- 信用金庫の役員
- 公証人
- 行政機関(公安審査委員会、公正取引委員会、国家公安委員会、教育委員会など)
- 商工会議所の会員
- 警備員
- 質屋
- 生命保険募集人
- 旅行業
自己破産手続きを行うにあたって、上記職業に登録している場合は取り消しの手続きを行う必要があります。
ただ、免責決定後は再登録可能で今後ずっと制限がかかるわけではありませんので安心してください。
依頼料が高額
自己破産は個人で手続きするのは非常に困難で、多くの場合法律事務所に依頼する必要があります。
依頼する法律事務所によっても費用は変動しますが、約60~80万円(予納金含む)になることが多いです。
自己破産の手続きが開始した時点で借金の返済は停止されますので、それまで返済に充てていた分を依頼料として支払いすることも可能です。
「それでも自分は自己破産できるか不安」という方は、まずは法律事務所に相談してみることをオススメします。
予納金(よのうきん)とは?
自己破産において代理人を依頼する場合の弁護士費用の他に自己破産をするために裁判所に納める費用(予納金)の2種類存在します。
基本的には代理人が代わりに納める形になりますので「弁護士費用+予納金=実際にかかる費用」ということになります。
自己破産を行った場合の家族・会社への影響
自己破産は返済義務が免除される反面、財産の差し押さえやブラックリストの登録などデメリットも数多くある手続きです。場合によっては家族や会社、周囲への影響を及ぼすため事前に把握しておくことが重要になります。
家族への影響
結論から言うと、家族に内緒で自己破産するのは不可能です。
また保証人(連帯保証人)を配偶者にしている場合は、自分の返済義務が免除となってもそのまま配偶者に支払い義務が移ってしまいますので注意が必要です。
破産手続きによる財産没収・ブラックリスト登録の対象は手続者本人のみ
ただ自己破産によって発生する財産没収(差し押さえ)やブラックリスト登録はあくまで“手続者本人のみ”であって、家族や配偶者所有の財産・信用情報に影響することはありません。
例えば、配偶者名義の車だった場合は処分されませんし、家族名義のクレジットカードも普段通り利用できるということです。
同様の理由で、子供にも手続者の信用情報が影響することはありませんので安心してください。
会社への影響
自己破産はあくまで手続者本人の自由なので、その事実を会社に報告する義務はありません。ただ、自己破産に必要な書類の一つに「退職金見込額証明書」というものがあるのですが、この書類の発行先は“所属する会社”になります。
この書類を利用する場面というのは限られるので、例え内緒にしていたとしても会社に請求した際に「もしかして自己破産をしたのかな?」と怪しまれることになるでしょう。
債務整理の事実を家族・会社にバレたくない場合
前述の通り自己破産を家族・会社に隠しながら手続きするのはほぼ不可能で、同様の理由で個人再生も難しいです。
家族や会社にバレることなく借金を減額する方法、、それは任意整理(にんいせいり)になります。
裁判所の認可が必要な自己破産(個人再生)と違い、任意整理は債権者との交渉のみなので比較的手軽に手続きできるのも魅力の一つです。
詳しくは別記事で解説しておりますので、任意整理については下記をご覧ください。
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まとめ|自己破産は諸刃の剣
自己破産について解説しました。
まとめますと、
- 自己破産は借金の返済義務が免除になる手続き
- メリットが大きい反面財産の差し押さえやブラックリストといったデメリットも大きい
- 裁判所の認可が必要で免責決定まで複雑な手続きや時間を要する
- 家族や会社への影響も少なからず存在する
例え何千万、何億円という借金を抱えていても裁判所から認可されれば返済義務が免除になるのが自己破産の最大のメリットです。
ただし自己破産のデメリットも理解していないと、その後の生活に支障をきたすことになりますので、まずは法律事務所に相談し「自己破産が適当か否か」を判断した上で検討するようにしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。

家族に内緒で借金完済できる“唯一”の方法、それは任意整理(にんいせいり)です。
愛する家族だからこそ言えない借金の悩み、それに畳みかけるかのように迫る返済の期日、山積みの督促状、取り立ての着信履歴の数々。。
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